リーダーの資質というと、知識があり、リーダーシップを発揮して集団をまとめて目的を達成したり、個を活かすためにすべてをフォローすることによって個性を発揮させて目的を達成するというように、いろいろなタイプのリーダーがいます。
サッカー日本代表で例えると、強烈なリーダーシップを発揮してチームを引っ張る『本田タイプ』と個を活かすために全面的にバックアップに回る『長谷部タイプ』といったところでしょうか。
しかし、お笑い界で有名な「竜兵会」を束ねるダチョウ倶楽部の上島竜兵はそれらのリーダー像とは異なる新しいタイプのリーダー像なのです。
頼りにされないリーダー
「竜兵会」といえば、主力メンバーは強烈な個性の芸人が揃っています。同じダチョウ倶楽部のリーダー肥後克広、土田晃之、有吉弘行、劇団ひとりなどなど。上島竜兵のリーダー像は、一見彼らの個性を発揮させる『長谷部タイプ』かと思うのですが、どうもそうでもありません。
『長谷部タイプ』のリーダーは、困った時に頼りになるのでメンバーから尊敬されたり頼りにされたりするのですが、上島竜兵は全く頼りにされていません。頼りにされていないというと語弊があるかもしれませんが、上島竜兵の技量や知識で助けてくれるわけではないということです。
では、なぜメンバーからあんなにも信頼されてついてくるのかというと、それは大きな愛でメンバーを包み込んでいるからなのです。
大きな愛で包み込めるのもリーダーとしての資質
普通、リーダーはメンバーから馬鹿にされたりすると、プライドから怒ったりします。リーダーであるという自負が強ければ強いほど、その傾向にあります。
しかし、上島竜兵は全く怒らないのです。酒の席で酔っぱらってダメな部分をいっぱい見せてしまい、それをツッコまれても笑ってすます。その話をTVでした後輩がウケればそれでOKとしているのです。
「竜兵会」のメンバーである劇団ひとりは、インタビューで上島竜兵に対して次のように語っています。
テレビでけなしてもツッコんでも平気な大先輩は他にはいない。若手のピン芸人でもキャラを押し通してずうずうしくいられるようになるのも竜兵さんという大船のおかげです。媚(こ)びたヤツに仕事を回すでもなく、僕たちに竜兵ネタを提供してくれる。事務所の先輩・後輩芸人をつなげてくれる。金は出すけど見返りを求めない、むしろ後輩にツッコまれて終わる。何ていうんでしょうかね、直接的じゃなくて長く肥やしになるチャンスをくれるんですよ。そんな竜兵さんだからつい集まってしまう。元日は竜兵会の集まりが最優先、年末に海外行こうとカミさんに言われても、元日以降と決めていますよ。
自分が一緒にTVに出れば、率先してイジられ、上島竜兵を上手にイジることによって、後輩がまたTVに出られればいい。どんな扱いをされても、その圧倒的な愛で後輩を受け止めてあげているからこそ、後輩たちは上島竜兵についていくのだと思います。
見返りを求めない愛が部下や後輩から信頼される秘訣
有吉弘行がまったく売れていなかった時代、「俺はお前のことが大好きなのに、なんで仕事がないんだ」と泣きながら飲んでたというエピソードがあります。人は誰かから認められたいという気持ちが必ずあるものです。誰からも認められていない状況で、たった一人だったとしても認めてくれる人がいれば、その人のために頑張れるのです。
また、劇団ひとりがまだ売れていなかった頃、ラジオに呼んだり、飲み会に声をかけてくれたりしたのも上島竜兵だったそうです。
それから10年くらいが経ち、ダチョウ倶楽部さんがパーソナリティーのラジオ番組が始まった。00年代のお笑いブームに火をつけたテレビ番組「ボキャブラ天国」に出演して顔が売れていた、土田晃之さんやデンジャラスさんなど若手後輩がゲストに呼ばれていました。僕はその頃お笑いブームの波に乗れず、くすぶっていた。そんなときに竜兵さんから、「草野球に来てくれたヤツ、あいつ呼んでくれないか」とラジオ出演のオファーをもらった。
後輩に対して先輩面するのではなく、人間として本当に愛すことができるからこそ、後輩たちもその愛に応えることによって成り立っている関係なのだなあと思いました。
『人的インセンティブ』と『評価的インセンティブ』を上手く組み合わせる
上島竜兵の手法を分析すると、後輩への愛を『人的インセンティブ』と『評価的インセンティブ』を組み合わせることによって上手く伝えています。
「お前が必要だ」「お前がいないと生きていけない」という『評価的インセンティブ』を与え、それに伴う「竜兵さんのためなら」といった『人的インセンティブ』によって周囲からの信頼を得ているのです。
『金銭的インセンティブ』などと違って、こういった結びつきはかなり強力な関係を築けます。
まとめ
自分はリーダーに向いていないと思う人もいるかもしれません。しかし、リーダーの形は人それぞれです。周囲を引っ張る人もいれば、後ろを支える人もいます。上島竜兵のように大きく包み込むのも立派なリーダー像です。
どんな人でも、手段は関係なく、周囲から信頼を得られれば、それは立派なリーダーなのです。
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