部下を動かすということは思った以上に大変です。そんなことを悩んでいたとき、数々の民間企業でトップマネジメントを経験し、現在横浜市長として2013年4月に待機児童ゼロを達成した林文子市長の著書を読みました。
市長がこれまで数々の企業や現在の市役所で行ってきたマネジメントは単純明快、部下を「お客さま」と思うことでした。
民間企業では、トップセールスマンだった市長が、お客さまが自らの意志でセールスしたものを買うようにしたのと同じように、部下が自らの意志で仕事の成果をあげようと動いてもらえるようにすればいいと言うのです。
本書で紹介されている内容の中から、その方法をいくつか紹介します。
部下を「お客さま」と思うための5つの方法
ほめて、ほめて、ほめて、ほめつづける
残念ながら、ほめたからといって、すぐに部下ができるようになるケースは少ないでしょう。しかし、結果がでなくても「やっぱりあいつはダメだ」と思わずに、「ほめつづける」というザルで水をすくうような努力をするのです。すると部下は、いつしか成果をあげるための工夫を自発的に考えるようになります。
部下を育てるにはまずほめろというのは、どんな本にも書いてある、ある意味上司としてのHOW TOあるあるです。
たいていの場合、最初はほめるのですが、なかなか結果がでないことにガマンできず、「やっぱりあいつはダメだ」となってしまいます。
しかし、そこであきらめるのではなく、さらにほめつづけろと言っています。これは非常に難しいことです。それでも上司としてはガマンしなければいけないのです。
そして、それは叱るときにもやらなければなりません。
注意するときは「ほめる→叱る→ほめる」
叱るときにはまずほめて、叱ったあとはひと言、ふた言フォローする。耳が痛い話も部下が聞き入れてくれるよう、叱り方にも工夫が必要です。部下を叱るときに、大声をあげて怒鳴ったり、追い詰めるような言い方をしては、部下は心を閉ざしてしまいます。
叱るのは、相手を育てたいからで、相手に聞く耳を持ってもらえなければ意味がありません。こちらの話に耳を傾けてもらえるよう、私は最初にその部下のいいところを認めてから叱るようにしています。
これまでは、部下は上司の話に耳を傾けるのは当然とされてきました。しかし、時代が変わって終身雇用が崩壊した今では、気の合わない上司には媚びない部下が増えてきました。
すると、部下を教育しようとこれまでと同様な叱り方をしたのでは、部下は反発し、聞く耳を持たなくなるでしょう。運動するときに準備運動が必要なように、教育するために叱るのであれば、部下に聞く耳を持たせる準備をすることが大切です。
極端な例で言えば、「ほめる→ほめる→叱る→ほめる→ほめる」ぐらいすると、叱られているのではなくアドバイスをもらえているという感覚で話を聞いてもらえます。
ただし、仕事上の失敗以外のことは厳しく叱らなければなりません。ほめることによって調子に乗り失礼な発言をしたり、失礼な態度をとるケースがあります。それをそのままにしておくのは、部下のためにならないので心を鬼にして叱るべきです。
ホウレンソウは、上司から
昨今、ビジネスの世界ではますます競争が激しくなり、少しのミスも許されないような風潮になっています。部下がホウレンソウをしたがらないのは、こうした風潮と関係があると思います。黙っていればわからないミスを、ホウレンソウすることで見つけられるのではないかと恐れているのです。
(中略)
では、どうすればいいのでしょうか。部下のホウレンソウを待つのではなく、上司が自分からホウレンソウするのです。
以前エントリーした記事でも紹介したように、ホウレンソウを部下に期待するのではなく、上司から行うのは非常に重要なことです。何も言わなくてもホウレンソウするのが当たり前という考えを捨て、部下がホウレンソウをするように促してあげればよいのです。
最初のうちはホウレンソウの場を設けなければ報告がなかった部下も、報告するのが当たり前になれば、自然と習慣になって自ら報告するようになります。
また、せっかく報告してきたことは否定するのはやめましょう。せっかく報告しても毎回否定されてしまえば、また報告しなくなってしまいます。悪い情報を報告してきた場合は、報告したことをほめ、どうすればその状況を解決できるのかを一緒に考えるようにしましょう。
「くれない族」を卒業しなさい
部下を叱咤激励するのは、上司の仕事のひとつです。しかし、「もっと頑張ってくれないか」と部下の努力ばかり求めていると、あなたは仕事を放棄していると判断されます。厳しいことを言うようですが、部下の成果が上がらないのは、すべて最終責任者である上司の責任です。上司は「自分のフォローが足りないからではないか」「もっとできることはないか」と、常に自分のやり方を振り返って、解決策を考えていかなければなりません。
部下が上司を選べないように、上司も部下を選べません。誰もが優秀な部下であればこんなに楽なことはありませんが、そうでないことの方が多いのです。
「あれをしてほしい、これをしてほしい」「あれをしてくれない、これをしてくれない」と、部下にあれこれ求めてばかりでは、いっこうに部下が育つことはありません。
部下に求めるのではなく、部下の求めることをすることで、少しづつでも部下を育てていくことが必要です。
部下の手助けをすることは、決して部下を甘やかしているわけではありません。未熟な部下の足りない部分をフォローし、やって見せることで育てていくのです。
部下に受け入れてもらえないのは「当たり前」
新しい上司に対して、部下は警戒心を持つものです。最初は心を開いてくれなくても当たり前です。上司も感情を持った人間ですから、相手の反応は気になります。反応が薄い部下と話をするのは、つらいかもしれません。とはいえ上司の役割を担う以上は、部下としっかり向き合っていかなければなりません。それが上司の使命です。
新しい上司に対して部下が警戒心を持つのはしょうがないことです。部下にしてみれば、上司によって自分の仕事がどう変わるのか不安でいっぱいだからです。
自分のことを認めてくれる上司なのか、それとも厳しく高いレベルの仕事を要求されるのか。上司のタイプによりその後の仕事の進め方が変わってしまう恐れがあるからです。
なので、上司はまずは部下のその不安を取り除いてあげることから始めなければなりません。部下が受け入れるのではなく、先に上司が部下を受け入れることが大切なのです。
まとめ
いかがですか。読了後、これまでの頭で描いていた部下への接し方はすべて間違っており、考え直さなければならないことがわかりました。
部下が上司のために動くのではなく、上司が部下のために動く時代になったのです。
「俺の若いころは…」という考えを捨て、自分が若いころ「こんな上司がいれば…」と理想を描いていた上司になれば、きっと上手くいくのだと思います。
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