【書評】川村元気「億男」にはお金と幸せの答えがあった

億男 お金
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億男

2015年の本屋大賞にもノミネートされた川村元気さんの「億男」。川村元気さんといえば、映画化もされた「世界から猫が消えたなら」が有名ですね。

昔は小説ばかり読んでいたのですが、最近はビジネス本と漫画ばかりで、全然小説を読んでいませんでした。ただ、この「億男」は、お金と幸せに関する小説ということで、最近ようやく読んでみました。

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億男あらすじ

まずは、「億男」のあらすじについて、Amazonの商品説明を引用してご紹介。

「お金と幸せの答えを教えてあげよう」

宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪れる。だがその直後、九十九が失踪した。―――。

ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビルゲイツ……数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男の30日にわたるお金の冒険が始まる。

人間にとってお金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?九十九が抱える秘密と「お金の幸せの答え」とは?

多くの著名人から推薦文があるように、普段本を読まない人でも、すんなりと内容が入ってくる文章になっているあたり、うまい文章を書く作家さんだなという印象です。

ところで、Amazonのレビューを見ると、めちゃくちゃ賛否両論に分かれているんですよね。ベストセラー本にしてみたら珍しいぐらい酷評の数々が目立ちます。おそらく、否定的な意見の人は、普段から本をたくさん読み、この本を小説として読んだ方でしょう。

確かに、小説として読んだ場合、内容が薄くてストーリー性も物足りなく、読んでいてドキドキする感じもないので評価が低いのでしょう。設定とタイトルのワクワク感が高いので、期待を裏切られた感じを受けたのでしょうね。

一方、この本を評価しているのは、ビジネス本や実用書としてこの本を捉えた方。本に出てくる考え方や、格言を「なるほど…」と受け止められる方に多いようです。

ちなみに、作者の河村さんの対談によると、億万長者と呼ばれる富裕層の方々からの評価が非常に高かったのだそうです。

参考富裕層の心に刺さると話題のベストセラー本、『億男』著者が本当に見た億万長者の世界

つまり、すでにお金と幸せの答えを知っている人にとっては共感され、ずっとお金に縛られたまま生きていく人にとっては、「そんなのわかってる、わかってるけどできない」という痛いところを突かれてしまったがために、酷評されてるのではないかと思いました。

 

お金はお金が好きな人のところにやってくる

お金が好きで、お金持ちになりたくなかったと言ったら嘘になると答えた一男に、一万円札の大きさやお金の重さなどを聞いた九十九。それに答えられない一男に対して、九十九はこう言いました。

ぜんぜんすごくない。どれも調べればすぐ分かることだよ。調べなくても、定規を持ってサイズを測り、秤を持って重さを量ることなど五分もあれば済むことだ。一男くん。そこで君に言わなくてはならないことがある。つまるところ、君はお金が好きじゃないんだ。だって、自分の体重や、家族の好きな食べ物や、好きな女性の誕生日は気にしているのに、毎日触れているお金の大きさや重さを君は知ろうともしていない。本当に興味があれば、お金のすべてを知ろうとするはずなんだ。どんな色で印刷されていて、どんなものが描かれているか仔細に見るはずだ。だけど君は今までそんなものを見たことがないだろうし、知ろうともしてこなかった。つまり、君はお金に興味がないんだ。

いきなり頭をガツンと殴られた感じがしました。確かに好きなものについては、頼まれてもないのに自分でいろいろ調べたり、知ろうとしますよね。

例えば、私の好きなもので言えば、ベイスターズに関しては、いろいろ調べたりします。最新のニュースしかり、新入団選手の評判や各選手の出身校などなど。好きなので、もっと知りたいと思いますし、知ろうとする行動をとります。

なのに、お金に関しては、ここ最近まで全然知ろうとしませんでした。結局のところ、私も含めた世の中の「お金が好き」と言っている大半の人って、お金が好きなのではなく、お金で手に入れられるものが好きなだけなんですよね。

もし本当にお金が好きなら、お金を使って減らす行為なんてしないはずです。好きなお金を増やす方法を考え、無駄にお金を使わない生活を身につけているはずです。

そう言えば、本当のお金持ちほど、質素な生活をしているって言いますよね。

むしろ、君はお金を悪者にしてきたんだ。お金を持つと不幸になる。お金でも買えない幸せがある。そんな言い訳をして、お金に怯えて逃げ回ってきたんだ。だから君は、お金の大きさも、重たさも、何も知らない。好きでもないものが、向こうからやってかるはずがない。君がお金持ちにならなかったのは、才能がなかったからでも、運がなかったからでもなく、金持ちになるためにするべき、あたりまえのことを何もしてこなかったからなんだ。

お金では買えない大切なものがあるっていうのは、お金を持たない人の常套文句だったりしますね。

でも実際に世の中の8割〜9割のものはお金で手に入れることができるわけですし、お金で買えるものと買えないものを両方手に入れることができるのは、お金を持っている富裕層の人間だけなんですよね。

つまり、「お金じゃ買えないもの〜」って言っているのはただの言い訳で、結局はお金を手に入れる努力を放棄しただけに過ぎません。「お金じゃ買えないもの〜」って言って、説得力があるのは、お金も持っている人だけなのだと思います。

 

お金の世界ではルールを理解している人が富み、知らない人間が貧しくなっていく

一男くん、君は、少し調べるだけで分かるあたりまえのルールを知ろうともしなかった。お金の世界では、このルールを理解しているものが富み、知らない人間が貧しくなっていく。ポーカーやチェスと変わらない。そこには。誰にでも平等なルールがあるだけなんだよ。ただ、そのルールを理解し、勝てるまで学び、考えて行動する。それだけが勝敗を分けているんだ。ポーカーでもチェスでも勝てる者は然るべくして勝ち、負ける者は、然るべくして負ける。それと同じことなんだよ。

学校では、お金について教えてくれたりしません。誰もがお金に関するルールを知らないまま大人になり、知らないままお金に振り回されてしまっています。さすがにそれでは幸せになれるはずがありませんよね。

そして、世の中にはお金だけではなく、さまざまなことに関するルールも存在します。受け身であっても教えてくれるルールと、受け身では知ることができない本当のルールです。

受け身でも知ることができるルールの代表格といえば、学校や親が教えてくれることでしょう。「いっぱい勉強して、いい会社に入れば幸せになれる!」というのは、まさしくこの受け身でも知ることができるルールです。

しかしながら、そういったルールは、得てして誰かにとって都合がいいようにできています。優秀で従順な社員を手に入れたい企業側の思惑が見えたりしませんか?

お金に関してもそうです。無駄に浪費してもらい、お金に縛られた生活をしてくれる人が増えれば増えるほど、一部の富裕層だけが豊かになるようになっています。

ちょっと調べれば分かるようなことにも興味を持たなければ、お金に縛られた人生から一生抜け出すことはできません。

 

あたりまえのことを、あたりまえにやるだけで、ほとんどの勝負は勝つことができる

この世界ではあたりまえちゃうことの方がとかく目立つし、よく思われたりする。でも勝つためには、あたりまえのことを見つける目が必要なんや。そしてあたりまえのことを、あたりまえにやる。ただそんだけでほとんどの勝負は勝つことができる。でもそれが一番難しい。実際、この競馬場でそこらへんを歩いている奴に、そのことを分かっている奴は誰もおらへん。みんな自分の欲とか恐怖とかに囚われて、あたりまえのことを見失う。そやから、賭け事はあたりまえのことをバカにせんとやる奴らが勝つんや

お金を増やすあたりまえの方法ってなんだと思いますか?それは、入ってきたお金を使わずに、常にお金を貯め続けることです。使わなければお金が減ることはありません。

そんなあたりまえのこと…と思うかもしれませんが、そんなあたりまえのことができないからお金が増えていかないのです。

全てのお金を使わないというのが無理でも、入ってくるお金よりも使うお金を常に少なくすれば、お金は貯まります。それすらもできないからお金持ちになることができないのです。

ではどうすればいいか?使う予定のお金よりもたくさん稼げばいいだけですよね。これもあたりまえの話です。

つまり、世の中のルールというのは実は単純明快であたりまえのことだったりするものです。そのことを、あたりまえとバカにする人ほど、行動に移さず、あたりまえのことができません。あたりまえのことをあたりまえにできないから幸せになることができないのです。

そういえば、Amazonのレビューにも、「書いてある内容は真新しさもなく、あたりまえのこと」と酷評されていましたが、そういう人ほどあたりまえのことができておらず、今の生活から抜け出せない人なのでしょうね。

 

本文中に出てくる著名人の格言

本文中には、古今東西様々な著名人の、お金にまつわる格言が出てきます。

  • 貨幣とは、奴隷制度の新しい形だ (トルストイ)
  • お金は鋳造された自由である (ドストエフスキー)
  • 人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ ( チャーリー・チャップリン)
  • 金持ちが、そのお金をどのように使うか分かるまで、その人間を褒めてはいけない (ソクラテス)
  • 十セントを大切にしない心が、君をボーイのままにしているんだよ (ジョン・ロックフェラー)
  • 富は海の水に似ている。それを飲めば飲むほど、喉が渇いていく (ショーペンハウアー)
  • どんな人間でも金で買収されない者はいない。問題はその金額である (ゴーリキー)

他にも、先日大統領に就任したドナルド・トランプ氏の格言や、ビートルズの名曲「Can’t buy me love」の歌詞(和訳付)なども出てきており、これだけを追いかけて読み直すのも有りかと思います。

 

まとめ

多くの人にとって、お金と幸せ関係は比例すると考えているのではないでしょうか。かくいう私も、さすがにお金さえあれば幸せになれるとは思っていませんが、もっとお金があったら幸せになるチャンスが増えるとは思っています。

お金があれば、好きなものも買えますし、好きなこともできます。お金のために働かなくてもすむので、なぜ働くのかを改めて考えることもできるかもしれません。

しかしながら、お金を得たことによって、失うものも出てきます。失うものは人それぞれでしょうが、中には幸せを失ってしまう人もいるのかもしれません。

お金と幸せの答えについてはネタバレ自重ということで本文を読んでいただきたいと思うのですが、個人的には一男の奥さんの万佐子が言った言葉にあるような気がしました。

お金と幸せの答えを知りたい方は必読です!

それではまた、see you!

 

 

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