最近では多く見かけられるようになった中間管理職向けの本。
自分が管理職やリーダーになり、なかなか組織として機能しないと悩んでいるときに手に取ることが多いのではないでしょうか。
そんな人向けの、マネジメントの本質に関して書かれた伝説的な名著があるのをご存知でしょうか。
それが、今回紹介する「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」という本なんです。
HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント
HIGH OUTPUT MANAGEMENT ~人を育て、成果を最大にするマネジメント~
本書は、著者がインテルの社長に就任して5年目の1983年に書かれた本で、40年たった今でも内容が色あせていないマネジメントに関する伝説的な名著です。
世の中には、経営者向けとか若手社員向けの本が山ほどありますが、本書の対象となるのは中間管理職のミドル・マネージャーに向けたもの。
本書がいかなる読者を対象としているかを考えてみることにしよう。実は、著者である私としては、いかなる組織の中においても通常は忘れ去られた人間の存在とされるミドル・マネジャーに語り掛けたいと、とくに強く願っているのである。
経営者向けや現場のリーダー向けの教育課程は多く存在していますが、その間には多くの中間管理職者が存在し、こういったミドル・マネジャーこそが、いかなる組織においても、その肉であり、血である存在なのだと著者のアンディは強く語っています。
マネジャーのアウトプットとは、組織体のアウトプットのことである
第二のアイデアは、それが企業の仕事であれ、政府・官僚機構の仕事であれ、人間活動の大抵の形態は、個人の手によって追求されるというよりも、チームによって追及されるということである。この考え方は、本書の中で私自身が最も重要だとみなす次の一文の中に要約されている。すなわち、「マネジャーのアウトプットとは、その直後の監督下になったり、または影響下にある組織体のアウトプットである。」
マネジャーのアウトプットってなんだと思いますか?
判断したり決断すること?
方向付けをしたり、指示をすること?
教育したり、指導すること?
人事評価すること?
これらのことは、マネジャーのアウトプットではなく、アウトプットをするための活動の一部でしかありません。
では、マネジャーのアウトプットは、一体なんでしょうか?
本書の中で、アンディは、「マネジャーのアウトプットとは、自分の組織のアウトプットと自分の影響力が及ぶ周りの組織のアウトプットを足したもの」と説明しています。
生産ラインのマネジャーのアウトプットは、高品質の製品を効率よく作り上げることであり、高校の校長先生をマネジャーと例えるなら、アウトプットは、学校教育を終えた生徒だということ。
なぜそう言えるのかというと、ビジネスにしろ教育にしろ、仕事は「チーム」でやるものだからです。
もちろん、マネジャーも自分の仕事をやり、それをやりこなしているかもしれません。
しかし、マネジャー個人のアウトプットは、マネジャーとしてのアウトプットにはなりません。
マネジャーのアウトプットは、あくまでも部下や影響下にある仲間たちが創出するアウトプットで測定しなければならないとアンディーは説明しています。
では、マネジャーのアウトプットが部下や組織のアウトプットであるならば、マネジャーの仕事は、いったいなんなのでしょうか?
それは、自部署や、影響を与える部署のアウトプットを最大限にすることが仕事であり、そのための手段として冒頭の質問に出てきたような判断や決断をし、方向付けや指示をして、教育したり指導をしていくということです。
つまり、先ほど出てきた、これまでマネジャーの仕事と考えられていたことは、あくまでもアウトプットを出すための手段でしかなく、マネジャーとして仕事をするには、アウトプットにつながることを優先して行わなければならないということなんです。
ということは、マネジャーがどんなに忙しく長時間働いていたとしても、アウトプットが満足するものでなければ、それは仕事をしているとは言わないということなんですね。
マネジャーは「テコ作用」を働かせてアウトプットを最大化する
次に、生産性を上げる第二の方法を述べよう。それは仕事を速くやるのではなく、遂行する仕事の性質を変えることである。活動に対するアウトプットの率を上げ、それによってたとえ一従業員時間あたりの活動は同じままであっても、アウトプットをもっと上たいと考えるのである。
(中略)
私はここで、「テコ作用」という概念を導入したい。特殊な作業活動様式によって発生するアウトプットのことである。テコ作用の高い活動は高水準のアウトプットを生じ、テコ作用の低い活動は低水準のアウトプットとなる。
さらに本書では、マネージャーとしてアウトプットを大きくするにはどうすればいいのかというこに対して「テコ作用」という概念で説明しています。
テコとは、小さな力を大きな力に変換する物理のことで、一般的には「テコの原理」が有名ですが、本書で説明している「テコ作用」という概念も、この「テコの原理」をイメージすると理解しやすいかもしれません。
テコには、支点・力点・作用点があり、支点をどこにするかによって得られる力が変わりますよね。
テコ作用という概念もこれと同じで、「マネージャーの関わりによって、部下のアウトプットにも影響を与えている」という考え方なんです。
どういうことかというと、力点にあるのが部下の力量。支点がマネージャーの関わり。そして作用点にあるのがマネージャーが関わった後の部下のアウトプットです。
マネージャーの関わり方がうまく働けば、部下の力量よりも大きなアウトプットを得られますし、関わらなければ、部下の力量がそのままアウトプットとして現れます。
そのことにマネージャーが気づいて、部下の仕事にうまくテコ作用を働かせることができると、大きなアウトプットを生み出すことができるということです。
ただし、テコ作用は、部下のアウトプットに対してポジティブに働くだけとは限りません。残念ながら、テコ作用がネガティブに働くこともあります。
マネジャーの最も重要なタスクは「訓練」と「動機付け」
マネジャーの最も重要なタスクは、部下から最高の業績を引き出すことである。したがって高いアウトプットの妨げとなるものが2つあるとすれば、マネジャーとしての問題の取り組み方は2つあることになる。それは、「訓練」と「動機付け(モチベーション)」である。
人が仕事をしていない理由は2つあります。
単純にその仕事をできる能力がないか、あるいは、やる気がないかのいずれかです。
この2つの理由が、部下が能力を最大限発揮できない理由となります。
であれば、マネージャーとして、これらの問題に対する取り組みも2つあることがわかりますよね。
それが、「訓練」と「動機づけ」です。
仕事ができる能力がないのであれば、教育や訓練をすればいいということ。
そして、どんなに訓練によってできる能力を与えたとしても、動機付けがなければその能力がうまく発揮されません。
つまり、すべてのマネージャーにとって「訓練」と「動機付け」はとても大事な仕事であり、他の誰にも権限委譲できないとても重要なタスクの一つということだということです。
まとめ
本書では、マネジャーが組織のアウトプットを最大化するためにしなければならない様々なタスクについて説明されています。
例えば、本記事内では割愛しましたが、第1章に出てくる「朝食工場」の例えは、スムーズに動く製造工程のように経営管理プロセスを動かせという考え方であり、これはそのままさまざまなプロセス管理に応用することができます。
どういうことかというと、製造業では当たり前の考え方となっている「ボトルネックを見つけ、求める結果から逆算してプロセスを考える」とか、「価値が最低の段階で問題を発見して解決すべき」というのは、聞けばそんなのは当然と思ってしまいますが、実際に自分や部下がそこを意識して仕事をしているかというと、なかなかできていないところだと思います。
しかし、これこそがアウトプットを最大化するためには必要なポイントだということ。
個人としてここに気がつき、自らの意思で個人のアウトプットを最大化できればいいのですが、なかなかそれが難しいということで、その管理をするのがマネジャーの「テコ作用」を働かせるところなのだとアンディは言っています。
これらのことから個人的に感じたのは、本書の内容はミドル・マネジャーにかぎらず、個人にも当てはまる内容だなぁということ。
というのも、自分は自分自身をマネジメントするマネジャーであると捉えれば、自分のアウトプットだけでなく、自分が影響を与える周りの人のアウトプットも含めて「自分の人生のアウトプットである」というふうに言えると思うからです。
その中で、テコ作用が大きく働くところに力を入れて、訓練と自分自身に対する動機付けをすれば、高いアウトプットを得られる「より良い人生」を送れるのではないでしょうか。
本書では、今回紹介した内容の他に、マネージャーにとって会議は必要か?という話や、人事考課や面接についてのこと、さらには「マネージャーは部下と個人的な友人となるべきか?」という問いについても書かれていますので、気になった方は、ぜひ本書を手に取って読んでみてください。
あなたは、これからの仕事や人生において、アウトプットを最大化することを意識して過ごしますか?
それとも、惰性でなんとなく時間を過ごして生きていきますか?
それではまた、see you!
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