【書評・要約】ひらめかない人のためのイノベーションの技法|篠原信

書評
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近頃は、どんな仕事でも、「イノベーション」を求められる世の中になってきて、会社の上司や経営陣から、「独創的な仕事をしろ!」「創造的な仕事をやれ!」なんて言われているのではないでしょうか。

とは言っても、そんなに簡単にイノベーションが起こせるなら世話がないわけで、「誰でも簡単にイノベーションが起こせるなら、お前がイノベーションを起こしてみろ!」と言い返したい人も多いと思います。

にもかかわらず、最近流行りのAI技術によって、「将来的には多くの仕事がAIに奪われて、残るのは創造的な仕事だけ!」なんて脅されると、もうどうしたらいいのかわからなくなってしまいますよね。

そんな人たちに向けて、著者の篠原さんは、「イノベーション」を起こすためには、クリエイティブな発想や創造的な発想がパッと思いつくだけではないよ!と言っています。

ひらめかない人のためのイノベーションの技法

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イノベーションは一部の天才だけのものではない

アラフィフと呼ばれるトシになって思うのは、創造的な仕事を天才だけの特権であるかのように語られることが多いのは、少々釈だということ。天才が一気にゴールに飛躍できるところ、不器用者は橋をかけなければならないかもしれない。けれど結局は、ゴールできればいいのだ。やり方、道のりは人それぞれで構わない。

著者の篠原さんは、ご自身のことを自他ともに認める独創性のカケラもない人間だと言います。

それでも、世界中の研究者が取り組んでうまくいかなかった技術を開発できたり、周りから「独創性がある」と言われるようになったのは、長年かけて試行錯誤を繰り返して気づいたちょっとしたコツや方法が有ると説明しています。

本書は、自分の不器用さを罵っていた20代の自分が知りたかったことを、書き留めたものだ。不器用、発想が乏しいと言われても、絶望する必要はない。そんな人間でも創造的な仕事をする「方法」がある。自分の創造性のなさに苦しみ、悲観的になっている人に、どうにか言葉を届けたい。

鳥そっくりに羽ばたいて空を飛ぶ飛行物体は作れなくても、プロペラやジェットエンジンという作りやすい形を選ぶことで、ドローンや飛行機といった空を飛ぶものを作ることはできます。

要するに、センスがなくたって、コツさえつかんでしまえば、才能豊かな人と似たような結果を出せるということです。

時間がかかろうが、回り道をしようが、結局はゴールできてしまえば良いわけです。

 

「暗黙の価値基準」を問い直してみる

私たちは「問い」を発せられると、問いの裏に暗黙のうちに当然視されている「価値基準」を受け入れてしまうことが多い。(中略)

焦って解決策を早く見つけようとせず、課題をよく観察することで「そもそも」を問い直してみる。

イノベーションを起こすためには、まずは世の中にある暗黙の価値基準から抜け出す必要があります。

何か新しいことを生み出そうとしても、なかなかアイデアが思い浮かばないのは、私たちの中にある固定観念が邪魔をしているから。

だから、まずはこの暗黙の価値基準である固定観念や一般的な価値観を捨てて考えて、思考の枠組みからズラして考えてみることが大切です。

 

考え尽くし、疑い尽くすと「過信」を生む

「信念」は、「疑う」ことによってガチガチに強化される。自分以上に物事を深く疑い、根底から考え直した人間はいない、という自負こそが、他者の意見を聞き入れない頑迷さへと変えてしまう。

固定観念や価値観などの「暗黙の価値基準」を問う一方で、疑い尽くした時の副作用についても本書では指摘しています。

「自分は前提や常識を疑える人間だ!」と思い込んでいる人ほど、自分の考えは正しいと思い込みやすく、融通が効かなくなる副作用に陥りやすいといいます。

「自分ほど深く考えるた人間はいない。」、「考え尽くした結果だから、反論の余地がない結論だ!」と自分のことを「過信」してしまうからです。

「過信」した時点で、イノベーションは生まれません。

そこから新たな発見を認めることがなくなるので、思考はそこで止まってしまいます。

解決策としては、「すべては仮説」と考えることです。

「すべては仮説」と考えれば、新しい意見や考え方は仮説を更新するだけと割り切ることができるので、疑う副作用を抑えることができるというわけです。

 

インプットとアウトプットは別物であり、本書はガイド的な役割

もちろん、本書を読めば直ちに創造的な人間になれるわけではない。(中略)

漢字は読めても書けないことが多いように、インプットとアウトプットは違うものだ。私も出会ったことのない環境の中で、みなさんがそれぞれで立ち向かっていただくしかない。本書は、ガイドの役割を果たすだけだ。

世の中には、いろいろな発想ができる「アイデアマン」と呼ばれる人は意外と多いものです。

しかし、そういった「アイデアマン」が、常に事業を成功させるとは限りません。

対照的に、大したアイデアではないけれど、実現するために粘り強く諦めなかった結果、大きな成功を収めたという人もいます。

成功するのは、むしろそういった粘り強く諦めない人だったりします。

アイデアというのは、無責任であれば誰でも思いつくことができます。

しかし、実際にそれを実現することは、面倒でとても難しいことです。

イノベーションを生み出せる人は、最後までやり抜く力を持った人です。

本書で紹介しているイノベーションを生み出す方法は、あくまでもガイドの役割を果たすだけなので、これを使ってアイデアを思いつくだけでは、イノベーションを起こしたことにはなりません。

その先のイノベーションを生み出すには、それをアウトプットしたり、やり抜くこと大切です。

そして、それができるかどうかは、結局あなた次第だということです。

 

まとめ

本書は、誰でもイノベーションをおこすための方法が、5つのチャプターに分かれてフレームワークのような形で紹介されていました。

個人的な感想としては、「価値基準をズラす」というあたりが、以前紹介した「ハック思考」に近いかなと感じました。

関連【書評・要約】ハック思考〜最短最速で世界が変わる方法論〜|世界の見かたが変わる思考術!

しかし、「ハック思考」のほうは、「思考」というだけあって、どちらかというと個人の発想をメインにした内容でした。

それに対して、本書は、「衆知」によるイノベーションだったり、「マネジメント」によるイノベーションといった、組織や大人数の力を使ったイノベーションを起こす方法も紹介されているので、「プロセスはどうあれ、イノベーションを起こせばゴールは一緒。」という前書きで書かれていることがそのまま表れているなぁという印象でした。

また、「固定観念や前提を疑え!」というのは、世に出ているさまざまな本でも言っている内容ですが、何でもかんでも疑えばいいわけではないと、「疑うことへの副作用」も説明されていたのは、他の本と違う点かもしれません。

ここら辺については、疑うという行為に対してだけでなく、「自分は勉強しているからそこら辺の奴らの考えとは違う」と考えがちな人たちにも通じる内容なのかなぁと思いました。

また、同じくグサグサと刺さったのが、「インプットとアウトプットは別物であり、本書はガイド的な役割」という点。

インプットばかりして学んだ気になって「アイデアマン」に成り下がるのではなく、ちゃんと最後までやり抜く人になりなさいというのは、自分としても大いに心当たりがあるところなので、胸に刻んでおこうと思います。

本書では、今回抜粋できなかった内容の他にも、5つのチャプターに分けてイノベーションを起こすさまざまなコツを説明していますので、興味を持った方は、ぜひ手に取って読んでみてください。

さて、あなたはインプットばかりして、アウトプットをしない、ひらめかない人ですか?

それとも、回り道をしてでもアウトプットしてゴールを目指す、イノベーションを起こす人ですか?

それではまた、see you!

 

 

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