「飲食店経営はやっぱり難しい…。」
これは、10年経営していたお店を閉店した私の友人が、飲みに行った際にポツリとつぶやいた言葉です。
そんな飲食店経営について、「ホリエモン」こと元ライブドア代表取締役CEOの堀江貴文氏が「流行る店とチャンスを潰す店はここが違う!」ということを書いたのが本書。
おそらく、多くの飲食店経営者が気づいていないことについて、1年365日外食しているという堀江氏が教えてくれます。
飲食店で成功するのが難しい理由
堀江氏は以前、確実に上手くいく商売とは次の4つに当てはまる商売であると言っていました。
- 利益率の高い商売
- 在庫を持たない商売
- 定期的に一定額の収入が入ってくる商売
- 資本ゼロあるいは小資本で始められる商売
これらを考えると、やっぱり飲食店って難しいんですよね。利益率は悪いし、食材の在庫を持たなければならない。定期的に一定額の収入が入ってくる商売でもないし、お店を持つので、資本ゼロあるいは小資本で始められる商売でもない。
じゃあ、飲食店は儲からないのか?というとそんなことはありません。実際に儲かっているお店はたくさんありますし、長く続いているお店もあります。
冒頭でも紹介しましたが、本書では、儲かる店とそうでない店では、何が違うのかということを経営者目線と客目線の両方で答えています。
ではまず、本書の内容についてAmazonの商品説明から引用してご紹介します。
流行る店とチャンスをつぶす店はどこが違うのか? 1年365日外食を続ける堀江貴文氏だからこその、全く新しい視点でのレストランビジネスへの提言です。大炎上した「鮨屋の修業問題発言」の真意は? 食べログとはどう付き合うべきか?
飲食店は今、大きな岐路に立っています。唯一無二の個性を追い求めながら、SNSを上手に使い、理不尽とも思える批判や中傷、ドタキャンに立ち向かっていかねばなりません。
この本は、そんな時代の中で必死に営業を続ける人々へのリアルな応援歌です。そして、レストランを愛するすべての人々に読んでいただきたい一冊でもあります。
本書内には堀江氏ならではの鋭い視点からの飲食店改革論と共に、実際の有名レストランシェフたちの悩みにもズバリと解答しています。
さらに巻末には著者が推薦する457店のリストもついてますので、こちらもお楽しみください。
第1章 僕はなぜおいしいものを食べたいのか
第2章「食べログ」「ドタキャン」「人材確保」を解決する
第3章 レストランビジネスで成功するために覚えておいてほしいこと
第4章「いい客」になるために
第5章 ホリエモンが解決する! レストラン経営の悩み相談室
第6章 ホリエモンの“食”遍歴
特別付録 ホリエモンが認めた全457店リスト
この中から、本書の内容を一部抜粋してご紹介します。
生き残るのはどんな店なのか
僕が「また行きたい」「誰かを連れて行きたい」と思い、TERIYAKIで紹介するのは驚きのあるお店だ。「こんな素材があったのか!」「え、この調理法ってなに」「これとこれを組み合わせてくるとは…」といった、僕をびっくりさせてくれるお店。次はなにが出てくるのだろうとドキドキし、次回はなにを食べさせてくれるのかと想いを巡らせ、しかしその予想をいい意味で裏切ってくれる。これは、それこそ、「10年同じレシピのミートソースが名物」を謳っていたのでは難しい。
私も仕事帰りに飲みに行くことが多いのですが、いつも行く店の他にも新規のお店を開拓して回っています。その際、また行きたいと思えるポイントの一つが、本書に書かれていることと同じく驚きがある店。焼鳥屋さんでも、他では食べれない珍しい部位を出してくれるところや、変わり種のメニューがあるお店は行きたくなります。
また、皿の盛り付け方や、注文してから料理が出てくる手際の良さなども驚きのポイント。そういうお店は、やっぱりどこも繁盛しています。
定番のメニューなどは、注文する側にしてみれば出てくるものが想像できてしまうので、そういった意味ではどこのお店もたいして変わりがなくなってしまいます。そういった差別化という意味では、この「驚き」というポイントは重要だということです。
ただし、本書の中にある「10年同じレシピのミートソースが名物」というお店に堀江氏が行きたいと思わないだけで、そういうお店でも名店と呼ばれるお店はあります。その場合、おそらく初めて食べた瞬間のファーストインパクトが大きかったりするんでしょうね。
強烈なインパクトを受けた多くのファンを獲得できれば、ずっと通い続けてもらえるお店になったりもするので、そういった意味でも、やはり「驚き」というのは大事なのでしょう。
現代のコミュニケーションツールを使って産地と直接「つながる」
なによりも大きいのは仕入れ。「毎日築地に行く」なんて、自慢にもなりはしない。現在のコミュニケーションツールを使えば、産地直送でいくらでも魚や野菜を買えるのだから。直接取引になるのでコストが抑えられるのは当然。流通も良くなっていて、あっという間に新鮮なものが必要な量だけ届けられる。
「毎日築地で仕入れしています!」と言われると、素人的には「おっ!この店は素材にこだわっているな!」と思うかもしれません。しかし、実態としては築地にも厳しいヒエラルキーが存在し、いいものや貴重な素材などは付き合いの長い業者や料理人に渡ってしまうので、なかなか手に入れることは難しいのだそうです。
それこそ、自分で築地で仕入れるよりも、ルートを持っている魚屋さんから卸してもらった方が、いい素材を手に入れることができる場合もあります。それらをすっ飛ばせるのが直接産地と繋がることだと言っています。
確かに、それなら市場では出回っていないような珍しい食材を手に入れることも可能ですし、他では出していないような料理を提供することも可能になります。
最近では、そういった取り組みも多いようで、私がよく行くお店でも、どこどこの農家から直接仕入れています!といったことがメニューなどに書かれてあります。
地方にある地元密着型の飲食店などでは、地産地消というキーワードを謳い、地元の農家でとれたものを使っていますというお店も多くなってきました。地産地消だから美味いのかというのも疑問ですが、それでも何かそういうキーワードってお客さんに響いたりするんですよね。
よくわかってない人だと、それだけで「あそこのお店は食材にこだわっている!」と思ってくれたりするので、そういった意味でも産地と繋がるというのはいろいろなメリットがあるのかもしれません。
とはいっても、いきなり地方の漁師さんや農家さんと繋がることができないでしょうから、そこは行動力や人脈が必要になってくるのでしょう。だからこそ、誰でもできることではないので、他店との差別化に繋がるのかもしれません。
10年続くお店にしたいなら進化をとめないこと
10年以上続くお店にするには、コンスタントにお客さんが来なければだめだ。つまり、お客さんに、いかに「また来たい」と思わせるかが鍵になる。「そんなことはわかっている」のだったら、あなたは「また来たい」と思わせるために、どんな努力をしているか考えてみて欲しい。
どんなに新規のお客さんが来たとしても、お店というのはリピーターが来てくれないことには長く続きません。そんなことはわかっているけれども、なかなかどうすることもできない悩みでもあると思います。
どの商売に対しても、永遠に続くテーマに対しては、様々な企業努力が行われています。例えば、長く続く大手チェーン店でも、定番メニュー以外にも定期的にメニューの入れ替えを行ったり、季節限定メニューを出すなどしてリピーターが飽きないようにしていますよね。
それに対して、繁盛していないお店にかぎって、いつまでもメニューが変わり映えせず、定番メニューも飽きてしまって客足が遠のいたりしています。これについては、心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
そしてもう一つ重要なのは、前出の「驚き」。驚きがあるお店というのは、「また行きたい!」「誰かを連れて行きたい!」と思うもの。実際、私も新規開拓したお店で、良い店を見つけると、すぐに誰かを連れて行きたくなったりします。
なかなかそんな「驚き」や「また来たい」と思わせるのは難しいですが、長く続くお店では必ずやっていることなので、これができなければ飲食店経営は難しいのかもしれません。
誰かが不幸になる価格は長続きしない
「お客さんが来ない」と頭を悩ませているお店に多いのが「いいものを誰もが食べられる値段で」という価格帯だ。根付けの問題というよりも、料理と価格への思い入れが強すぎて失敗している。出したいものは上を見ていて、値段は下を見ている。これは必ずしわ寄せが出るパターンだ。個人店なら自分が貧乏になるだけだけれど、人件費を圧迫するのはいただけない。そのうち、食材にも響いてきそうだ。
個人経営の飲食店で頭を悩ますのが価格設定なのかもしれません。高ければお客さんが来てもらえないし、安くすれば忙しくなっても儲けは少なくなります。そうすると、一緒の働く人たちの人数を減らし、人件費を削らなければなりません。結局、安くして忙しくなってもお店は回らず、客に迷惑をかけるようになります。
だいたい、価格設定で勝負しようとすると、大手チェーン店に勝てるわけがありません。相手は食材を大量発注して原価を抑え、セントラルキッチンで食材を仕込むわけですから、料理を安く提供できる仕組みを持っているわけです。
だったら、個人店では価格で勝負するのではなく、お店としての特徴で勝負するしかないのだと思います。わざわざ焼鳥屋の多い場所で焼鳥屋を出すのではなく、アジア料理のお店にするとか、焼鳥屋をするのであれば他のお店では出さない部位を出したり、鉄板焼きのように専属の焼き場を作って接待でも使えるようなお店にするなど、値段は安くないけど他店との差別化がはっきりとあるお店の方が繁盛するのだと思います。
本書でも書かれていますが、予約が取れないお店というのは、超高級店か信じられないほどコスパがいいお店だったりするので、中途半端な価格設定ではなく自信をもって出せる値段設定にしたほうが長く続けられるのでしょう。実際、安いから来るお客さんは、景気が悪くなると結局大手チェーン店に行ってしまうので、そこで勝負しない方がいいのかもしれません。
まとめ
このほか、本書の中では飲食店の三大問題でもある「食べログ」「ドタキャン」「人材確保」などについても書かれていますが、それらについては本書にて確認してください。
また、一時期炎上していた「鮨の修行問題」についても書かれていますので気になる方は一読することをおススメします。
内容としては、飲食経営者向けの本ということで、飲食経営をする気がない方にとってはあまり関係ない話ばかりですが、巻末のオマケとして堀江氏がおすすめする全457店のリストが掲載されていますので、美味しいお店が知りたい方はそれだけでもチェックする価値はあります。
とは言っても、起業しちゃうような人は、こういう飲食店経営向けの本でも、自分にプラスになるポイントを読み取って参考にしちゃうんですよね。実際、今回私がピックアップした内容などは、飲食業でなくても参考になるものばかり。
例えば、今後生き残れるようなサービスには、やはり「驚き」が不可欠ですし、長く続けるためには進化を止めないことが必要です。当然、どの業種であっても価格競争してしまうような商売をしていては、どこかにしわ寄せがきますし、誰かが不幸になるしかありません。
とうことで、飲食店を経営されている方、将来飲食店を経営したいと思っている方だけでなく、ビジネスにかかわるすべての方向けの本の一冊でした。サクッと読めるボリュームなので、気になる方はぜひご一読を!
それではまた、see you!
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