【書評】池田純「空気のつくり方」はベイスターズファン以外の人も必読のマーケティング本だった

公開日: ベイスターズ, 書評

空気のつくり方

場の空気ってありますよね。その場の空気を読める人はコミュニケーション能力が高く、読めない人はコミュニケーション能力が低いと見られてしまいます。

今まで、その場の空気は自然に作られるもので、コントロールがきかないモノだと思っていました。しかし、その場の空気を作りだすことができたら、それは最高の武器だと思いませんか?

それを可能にするのが、マーケティングなんです。

万年最下位で、毎年20億円以上の赤字を出し続けていた我らが横浜DeNAベイスターズを、買収からわずか四年半で黒字化した「空気のつくり方」を実例を交えて紹介しています。

空気のつくり方

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池田純「空気のつくり方」

まずはAmazonの商品紹介から一部抜粋し、本書の内容をご紹介。

恒常的に黒字経営が続く球団は、圧倒的なファン数を抱える読売ジャイアンツと阪神タイガース、そして”身の丈経営”を心がける広島東洋カープだけとも言われています。そんな中、ここ5年で急成長してきた球団・横浜DeNAベイスターズ。

本書は、池田氏がこれまで仕掛けてきたアイディア、球団のあり方など、ベイスターズ改革の全貌、そして池田式マーケティングの極意である、商品が売れる「空気のつくり方」を1冊にまとめたものです。球団改革の”空気”はいかにして生まれたのか。実例と、ビジュアルでご覧いただけます。

出典:Amazon 空気のつくり方

著者であり、横浜DeNAベイスターズの元球団社長の池田純氏は、住友商事、博報堂を経て独立後、2007年に当時のクライアントだったDeNAに参画。その後、同社の2012年の横浜ベイスターズ買収に伴い、横浜DeNAベイスターズの初代社長に就任しました。

かつて、プロ野球の世界は小さなパイの奪い合いでした。野球ファンは年々減少し、多くの球団の大きな収入源であったテレビ中継もほとんど無くなり、球団単体で黒字化するなんて夢のまた夢でした。それを池田氏は、たった4年半で黒字化することに成功したのです。

そんな池田氏が、どのような手法で横浜DeNAベイスターズを再建したのか?その秘訣が本書の中にありました。

 

マーケティングの10のプロセス

一般生活者の方々に直接提供する B to C の商品ならば、ざっくりとしたセオリーとパターンに当てはめることができるでしょう。それが、10のプロセスです。

  1. アナログ、デジタル、さまざまなツールと手法を駆使して最適なデータと情報を収集する
  2. 徹底した自社の組織分析と市場分析と顧客分析を行う
  3. 全ての戦術構築において基軸となる「戦略ターゲット」を定める
  4. 戦略ターゲットが「実は求めていた」商品を創造する
  5. ストーリーを創造する(商品と顧客、自社と顧客がつながるコミュニケーションを創造する)
  6. 実質的な数字につながる、あるいはストーリーが伝わる広告・PRを創造する
  7. このご時世必須のWebを徹底活用する
  8. 商品を通して会社まで魅力的に見えるようなブランディング戦略を実行する
  9. PDCAを通して、さらに魅力的な商品とコミュニケーションを創造する
  10. 営業戦略にまで口を出す。責任も持つ。

池田氏いわく、この10項目はどれも大切であり、優劣はつけられず、そのすべてがリンクしているのだとか。情報を収集し、分析してターゲットを定めるのはマーケティングの基本中の基本だと思いますが、個人的にはそのあとの「実は求めていた」商品を創造し、ストーリーを創造して、それを伝える広告やPRを創造するのが重要かなと思います。

というのも、マーケティングというと、情報収集、分析、ターゲットを定めるところまでは誰もがします。しかし、そのあとそれをどうやって活用して集客するかというところまで行きつきません。ターゲットに商品の「価値」を伝えようとするばかりで、ターゲットにとっての「価値」を伝えられません。そこで必要なのが、『ストーリー』です。

『ストーリー』によってターゲットにとっての「価値」を上手く伝えることができれば、共感感動を生みだすことができます。

 

わからないものはわからないと最初に割り切ってしまう

材料となるデータを揃え、クラスター分析で塊としては見えてきたとしても、その空気を心の底から理解したり共感することができない層は誰にでも存在します。そうした層のことをどうにか理解しようと多くの時間を費やしたり、あるいはわかったような気になるよりは、わからないものはわからないと最初に割り切ってしまうべきです。

わからないことをわからないと認めることは勇気がいります。しかし、それをせず、中途半端にわかったつもりでいることは危険です。何もわかっていないのに分かったつもりで行動してしまうのは、結局なにも生みだすことができません。

ただし、知ろうとすることは大切です。知らないものを知ろうとすることによって、新たな気づき発見があります。しかし、知ろうとすることと、わかったつもりでいるのは全然違います。わかったつもりでいるということは、すでにそれ以上知ろうとしないということです。それでは新たな気づきや発見すらありません。

関連「知っている」「わかっている」という人ほど本当は何もわかっていない

考えてもわからないことを理解しようとしてエネルギーを傾けても、結局は中途半端な理解しかできません。自分には見えないものが見えている人、得意な領域でより確度の高い方向性を示してくれる人に、まずは会う時間を作ってもらうことです。そして、下手にその人と同じレベルになろうとせず、わからないものはわからないという前提で、素直に教えてもらったほうが絶対に有意義です。

わからないことをその道のスペシャリストに教えてもらうことは恥ではありません。わからないことを素直に認め、そのうえで学ぶ姿勢をもてば、ムダな回り道をせずにすみます。

ただし、ただ教えてもらうだけでは相手にしてもらえなくなります。自分も相応に提供できるものが必要です。ギブ アンド テイクが成り立たないと、気軽に会える関係を築くことができません。しかし、ギブ アンド テイクどころか、自分の方が与えるものが多くなれば、困ったときに頼れる関係となります。

むしろ、ギブ アンド ギブ アンド ギブくらいできれば、こちらも気軽にわからないことを聞けるようになれます。

関連ギブ アンド テイク!?いえいえ、本当に幸せになるのはギブ アンド ギブという精神です

 

本当の競合分析

マーケティングにおいて、競合する同業他社の動向を分析することは王道といえます。しかし、それは最低限必要な作業だとしても、同じ業界を分析することによって新たな何かを生み出す確率が格段に高まるとは思えません。そればかり繰り返しているとむしろ自社も他社も結局、同じような方向に向かっていき、顧客が驚くようなオンリーワンの新しいものを提供する確率は下がっていってしまうのではないでしょうか。

競合他社の動向を気にするのは、ビジネスにおいて基本中の基本と言えます。しかし、そればかりにしか目がいかなくなると、差別化できるような新しい価値を生みだす思考がなくなります。

私が普段働いている会社でも、会議で話題に出るのは「他社はどうなんだ?」「他社はどうしているんだ?」という話ばかり。そのため、なかなか目新しい発想やアイディアはでてきません。それでは結局同じような商品やサービスしか市場にならばなくなってしまいます。すると、結局価格を下げるしかないため、同業者同士で消耗戦を繰り広げてしまうことになります。

一見、自分のいる業界とは関わりのない世界でも、役立てられるヒントはいたるところに眠っています。近眼的な視野でモノゴトを考えるのではなく、常に広くアンテナを張り、そして自らさまざまな場所に出向いて肌で感じることが大切です。自分もその場の空気と楽しさを実感しつつ、顧客にもっともっと楽しいことを提案したいと思えるかどうか、人の二倍も三倍も貪欲でいられるかどうかが大切だと思います。

新しいものを生みだすのは新たな発想です。それには、他の人では気づけないことに気づくための視野が必要です。自分とは関係ないことでも自分に必要になるヒントを見つける目。常に貪欲さをもてば、そういう目を養うことにつながり、他者との差別化を生みだします。

関連幅広いジャンルのインプットが質のいいアウトプットを生み出す

 

コンテクストを読む

二〇代前半のころ、私の師匠から、「コンテクスト」という言葉を教えていただきました。世の中のコンテクスト、文脈、流れをどう読むか。その方法は誰かに聞いたり教えてもらうようなものではない、当時そんなふうに感じたことを記憶しています。マーケティングにとって、あるいは、これからしっかりと生きていくために、何かすごく重要なことのように感じました。

コンテクストとは、文脈とか背景情報、状況や関係という意味があります。文章の前後のつながりと説明すればわかりやすいでしょうか。場の空気は、ただそこにあるものではありません。過去から現在、そして現在から未来へと流れていくものです。

過去から現在への流れを知り、そこから現在を見ると、そこから未来につながる「ストーリー」が見えてきます。逆に、その流れを見ずに未来を作ろうとすると、「ストーリー」は生まれません。結局、その場の空気を読む力、感じる力が必要だということです。

では、空気を読む力、感じる力はどうすれば身につくのでしょうか。それは自分で身につけるしかありません。過去から現在への流れを知ろうとし、現在をきちんと見ようとすれば、自然と未来につながる「空気」を見る力がついてきます。過去に目を背け、今を見ず、未来ばかり見ていてはその目は養われません。過去も現在も未来につながっているのです。

 

ストーリーはつくれる

では、ストーリーつは何か。それは、発信した情報や発売した商品に、共感や感動という価値を付け加えるものです。なんの脈略もなく売り出したTシャツは一〇〇枚しか売れなくても、同じTシャツにストーリーを持たせ、顧客の心を感動させ、付加効果を及ぼすことができれば一万枚売れる可能性をつくることができるかもしれません。ここでいうストーリーとは歴史を丸写ししたものではなく、もっと意図的に、恣意的につくり出すものです。史実から感動的なストーリーを抜き出して商品(ドラマ)を仕立て上げる大河ドラマに近いかもしれません。事実の中にある、伝えたい何かを明確にコミュニケーションすることです。ある種のデフォルメといっても間違いではありません。

ただの事実に人は感動しません。事実にドラマがあるから人は共感し、感動するわけです。ではどうやってドラマをつくるのか?それは、事実の中にある伝えたい事柄を抜き出し、時にはわかりやすくデフォルメすることも必要です。

ただし、単純に伝えたいことをデフォルメするだけではダメです。そこに事実や歴史との齟齬があると、とたんにチープな「ストーリー」となってしまいます。そのために必要なのが、前出の「コンテクストを読む」ということです。

ストーリーをつくるというと、なんだかターゲットを騙すようですが、そうではなく、わかりやすく伝える手段として使います。ベイスターズでは、コミュニケーションの大きな柱として活用していますし、ターゲットに意味のあるメッセージを伝える手段として非常に有効です。

うまく、そのストーリーがターゲットに伝わり心を揺さぶることができれば、商品やサービスの価値を何倍にも増幅する「空気」をつくることができるのです。

 

まとめ

内容的には、ベイスターズの話が主ですが、そのマーケティング手法はさまざまな業種で活用できます。一般消費者に商品やサービスを直接提供する「B to C」において最も重要なのは、ターゲットに「おもしろそうだな」とか「カッコいい」「かわいい」「楽しそう」と思わせること。そして、細部にこだわり抜いた「本物」を提供できるかです。

どんなにこだわり抜いた「本物」を提供できる準備ができていても、それを伝えられなければ「本物」が消費者に届くことはありません。届けるために、空気をつくり、消費者へ伝える努力をしなければならないのです。

『空気』は「読む」ものではなく、「つくる」ものだということを教えられた1冊でした。マーケティングを学びたい方は必読です!

それではまた、see you!

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    上場企業で働きながら週末社長として起業しました。起業した記録とマインドハックを備忘録として記録しています。
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